白 日 に 晒 さ れ る 。

 

 

 

一切なんの区別も限りもなく、衆目に触れた。
誰かの救いを誰かが求めて、私は自分じゃない誰かに救いを差し伸べて、私は自分に許しを求める。
ほしいほしいとねだって、泣いて泣いて、自分に縋る。
場所は舞台。時間は夜。観客には黒い黒い、大きな羽を持った白い鳥。夜目にも鮮やかに。目に焼き付いて。
帽子をかぶった大きな子どもが、ステッキを振り上げる。それは差し伸べた手によく似ていた。

(わたしをたすけてくれるのは)

振り上げられたステッキのさきからは透明な水の花が咲き誇る。
紳士な子どもは変わらずニヤニヤと笑う。水の花に映り込む月まで笑う。
月から送られる映像には、今の私が映る。舞台の上で。自分に縋る私が映る。

観客は、誰かにすがりつく。(だれにすがりついているの)
黒くて白い鳥は、空へと手を伸ばす。(夜は地面の上で眠るくせに)
大きな子どもはわらうわらうわらう。(にやにやにやにや)

衆目に触れる私は許しを求めて自分をさらけ出す。
夜に染まらない白いワンピースを裂いた。
そしたら白い花が服に咲いた。

(わたしをたすけてくれるのは)

かまわずに花をむしる。自分の中をも見てもらわなくては。
服から咲いた花は、引っこ抜いたら、とたんにしおれた。
かまわずに花を投げ出す。次の花へと手をのばす。いつか花に埋もれてしまう。だから抜かなくては。
私のまわりは萎れた白い花でいっぱいだ。
かまわずにかまわずにかまわずに。かまうものなどありもせずに。
広くて黒い舞台がかすれて白くなる。
私の白い花が、夜を押しやる。花が勝る。
黒くて白い鳥よりなお白い。
わたしが白く白く晒される。白日へと晒される。
私は私に救いを求めて私は私に助けてほしくて自分を皆に曝け出す。
嘘も偽りも、虚偽もがすべて。すべてすべて。
ぜんぶぜんぶがさらされる。
舞台は花に埋もれて。白いワンピースはどこまでも白く白く舞台を覆い、大きな子どもに巻き付き、黒くて大きな白い鳥は、白くて小さな小鳥たちになった。

そこまで全部曝け出して曝け出させたら、そうしたら、最初から許しが救いが欲しい事なんてひとっつもなかったことが、晒された。
ぽつんと一つ、それだけ残る。




ぜんぶ ぜんぶ 白い花へ さ ら わ れ た 。